inch magazine PocketStories 01 生まれつきの時間
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『inch magazine』から新たに生まれた、「短篇小説をポケットに」をコンセプトとした『inch magazine PocketStories』の第1弾は、韓国のSFシーンで注目を浴びるファン・モガによる短編『生まれつきの時間』。
韓国、映画やドラマだけでなく小説もとても熱いと感じていたのですが、やはり日本と同様に小説の市場というものは年々縮小しつつあるけど、女性層を中心にSFは盛り上がっているそうで、2019年は「SF小説元年」と評されているくらいみたいです。
巻末に収録された、特別対談「韓国SFが描くもの」(前田エマ×ファン・モガ×廣岡孝弥)も、韓国のSFの現状を知れると同時に、この作品の理解も深まる、とても最高な内容でした。
ファンさんの
そういった状況で、新しい作家によるSF小説が現実の問題などを拾い上げる担うようになってきたからだと考えられます。
という、現在の韓国SFの盛り上がりに対する考察もかなり興味深かったです。
SFやホラーというエンターテイメント的な表現を使って時代を表現するというのは、いつどこの時代でもとても有効。話は逸れますが、大学時代に、角川ホラー文庫の作品を通して時代を考える、という授業があって、とても面白かったのを覚えてます。
本作は、韓国における学力社会やジェンダー格差などがテーマになっているけど、藤子F不二雄先生的な"すこし・ふしぎ"な世界観と、優しい眼差しがとても印象的な良作でした。
inch magのPocketStories、滅茶苦茶良い企画ですね。
普段小説に馴染みのない人にも是非手に取ってもらいたい。
遊びに行くとき、電車での移動中にポケットからサッと取り出す。滅茶苦茶良いと思います。
以下、inch magのOfficial HPより転載。
人類が一度滅亡したあとの世界。「成長センター」で目覚めたアルムはすでに十五歳だった。生殖能力をなくした人類を再生するプログラムで急速な教育とリハビリを与えられたアルムは、ある日センターを逃げ出すが……。
2019年に韓国屈指のSF新人文学賞である第四回「韓国科学文学賞」の中短篇部門で『モーメント・アーケード』(2022年日本版はクオン刊)が大賞に選ばれてデビューした、SF作家ファン・モガによる未邦訳作品です。原著は韓国のSF雑誌「The Earthian Tales」No.2で2022年4月に発表され、高い評価を得ています。
本書は、韓国で加熱する教育格差や世界で問題になるジェンダー格差など、様々な不平等を描きながら誰にも普遍的な優しい物語になっており、正確な論理的な科学技術に基づいた本格的ハードSFとは異なる、「少し不思議=SF」かつ、現実社会の問題と向き合う作品です
本書の巻末には韓国に留学中で小説やエッセイなどを執筆するモデルの前田エマさん(「Hanako Web」など)と、「韓国SF小説が描くもの」について作者と対談しました。
格差やジェンダー問題などの現実社会の厳しさを韓国社会で見つめる役目として、文学や詩の重要性を民主化運動などを通して育んできた歴史のある韓国。現在、韓国に留学していて感じる視点から語っていただきました。
著者 ファン・モガ
2006年に来日、東京在住。漫画家制作スタジオを経てIT企業で勤務しながら韓国語で執筆した『モーメント・アーケード』が2019年第4回韓国科学文学賞中短編部門で大賞受賞し、作家デビュー。邦訳された作品はほかに『透明ランナー』『スウィート、ソルティ』など。未邦訳に短篇集『夜の顔たち』、長篇作品『私たちが再び巡り逢える世界』『言葉なき者の声(仮)』などがある。
訳者
廣岡孝弥
1981年富山県生まれ。『トトノイ人』をはじめ、リトルプレスの制作やサポート業に従事。2021年第5回「日本語で読みたい韓国の本 翻訳コンクール」にて『モーメント・アーケード』で最優秀賞を受賞。オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパン正会員。
表紙カラー、本文モノクロ80ページ、中綴じミシン製本
サイズ:W106mm×H184mm
発行:菅原祐樹(inch media)
装丁:坂脇慶
装画・挿画:大川久志
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