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小倉ヒラク - 僕たちは伝統とどう生きるか

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発酵デザイナーの小倉ヒラクさんの新著『僕たちは伝統とどう生きるか』。

小倉さんは、もともと都内でデザイナーとして活動していましたが、山梨の味噌蔵との出会いをきっかけに、発酵の専門家としての道を歩み始めた方です。

本書では、日本がこれから向かうであろう未来を見据えながら、その時代を生きるために必要な考え方を、小倉さん自身の経験に裏打ちされた言葉で丁寧に、熱く綴られています。

なかでも最も印象に残ったのが、「大文字の伝統」と「小文字の伝統」という考え方。

一般的に語られてきた「伝統」は、権威を生み出し、少数派や弱い立場の人を従わせるための「大文字の伝統」。
それに対するカウンターとして、本書では「小文字の伝統」という概念が提示されます。

権威に呑み込まれないよう、流れるように姿を変えながら受け継がれていくもの。それが小文字の伝統です。

大文字の伝統は「〇〇すべき」という強制的な命令。
小文字の伝統は「〇〇であってほしい」という自律的な願い。
大文字の伝統は、唯一の答えを生み出す求心力。
小文字の伝統は、多様な可能性を生み出す遠心力。
大文字の伝統は、文字と血に宿る。
小文字の伝統は、行為と手に宿る。
(58ページより)

権威を強調することで見えなくなってしまったものを、もう一度見つめ直すこと。
そして、絶対的な正解を探すのではなく、自分自身の生き方もまた一つの答えなのだと信じること。

この本を読んで、編集の仕事をしている中で時折感じていた違和感の正体が、とてもクリアになりました。
とても読みやすく、それでいて心に長く残る一冊。ぜひ手に取ってみてください


以下、出版社HPより。
材料がない、儲からない。
それでも伝統の担い手たちが「つくり続ける」のは、なぜか。


新しさ追うデザイナーから異色の転身、発酵の専門家となった著者が出会ったのは、
土地の〈記憶〉を未来へとつなぎ、自然と隣り合って生きる、
弱い人間の強かな“生存戦略”としての「伝統」だった――。



哲学・文化人類学・民俗学など複数の領域を縦横無尽に行き来する著者が、
ジョージアワインから日本酒、民藝まで、豊かで芳醇なエピソードとともに見せる、
驚くべき「小さな伝統」とものづくりの世界。



「つくるのは私ではない、微生物である」と味噌や酒をつくる醸造家たちは言う。

それは「つくる」を手放すということだ。

――「第4章 民藝 つくることの伝承」より



伝統が、ひとりの個人としてこの社会に生きることからの逃避になってはいけない。
今僕たちに必要なのは、すぐとなりの誰かを信じるための足がかりとしての伝統だ。

――「第4章 民藝 つくることの伝承」より



▼内容紹介▼

〇 歌舞伎だけじゃない! 醸造蔵にもある「襲名制度」

〇 共産主義によって「消滅の危機」に瀕していたジョージアの伝統的ワイン

〇 日本人とクジラの「深い関係」浮かび上がる、佐賀県呼子の松浦漬け

〇 美味しいお酒づくりの極意は「『自分』を殺す」こと

〇 「土の声を聞く」ために技術磨く、沖縄の伝統的焼き物やちむん

〇 ヒトラーは化学肥料を嫌っていた……排外主義と有機農業が「結びつく」瞬間

〇 岡本太郎の民藝批判にみる「オンリーワンうんち野郎」の精神

〇 ぎふ長良川鵜飼の「となり合う」

伝統

▼目次▼

プロローグ あなたにとって、伝統とは何ですか?

第1章 大文字の伝統と小文字の伝統

第2章 「歴史」の誕生、さびしさの地平融合

第3章 発酵 見えないものとつむぐ伝統

第4章 民藝 つくることの伝承

第5章 鵜飼 異なる存在と、風土を旅する

エピローグ 向かい合うな、となり合え
ブックガイド


2026
240 Pages
講談社現代新書

stacks オリジナル栞付き

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